50代女性は、家庭の平均給与が最も高くなる年代ですが、子供の大学進学による教育費負担が増大するタイミングとなりやすいとともに、老後資産の形成においてはラストスパートとなる重要な時期です。
50代女性に多いお金の悩みとしては、「子どもの教育費負担が不安」「長い老後生活に備えた老後資金を形成できるかどうか不安」といったものが多くなっており、また近年は「親の介護や相続」についての相談も増加傾向にあります。
この記事では、50代女性が抱えるお金の悩みについて解説した上で、50代女性がFPに相談した際の具体的な相談事例についてもご紹介しています。
日本の50代女性のお金事情とは
国の資料から、一般的な50代女性のお金事情について確認しておきましょう。
日本の50代女性の平均給与は、50代前半が328万円、50代後半が316万円となっています。
平均給与(男性) |
平均給与(女性) |
|
50~54歳 |
664万円 |
328万円 |
55~59歳 |
687万円 |
316万円 |
60~64歳 |
537万円 |
262万円 |
50代は平均給与が最も高くなる年代となっており、正社員なら女性でも最も平均給与が高くなることが期待される年代です。
ただ、60代前半になると平均給与は男女ともに下がることには注意が必要となっており、50代がいかに老後資金の形成において重要であるかが分かります。
50代の資産状況を見てみると、金融資産保有額は平均1,684万円となっていますが、中央値は810万円となっています。
ただ、これは金融資産保有世帯に限ったデータとなっており、金融資産を保有していない全体の24.4%の世帯を含むと、平均1,253万円、中央値は350万円となります。
金融資産保有額(平均値) |
金融資産保有額(平均値) |
|
50代(金融資産保有世帯) |
1,684万円 |
810万円 |
50代(金融資産無保有世帯含む) |
1,253万円 |
350万円 |
出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年以降)」
一方、住宅ローンなど50代で「借入金がある」は25.7%となっており、借入金の平均額は1,150万円、中央値は900万円となっています。
特に、50代の住宅ローン残高の平均は995万円、中央値は800万円となっており、借入金の大半を住宅ローンが占めている状況です。
借入金(平均値) |
住宅ローン残高(平均値) |
|
50代 |
1,150万円 |
995万円 |
出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年以降)」
住宅ローンは男女で返済するペアローンを利用する人も増えていますが、未婚化などにより住宅取得年齢が上昇していることもあり、平均値で見ると50代でも住宅ローン残高がまだ多く残っている世帯が多いことが分かります。
50代女性が抱えるお金の悩みとは
50代女性が抱えるお金の悩みを見ていきましょう。
子どもの教育費負担が不安
男女問わず、50代のお金の悩みとして最も多いのが、子どもの大学進学による教育費負担です。
大学の学費(入学金+4年間の授業料)は、国立大学(公立大学)や私立大学によって、次のように異なっています。
大学 |
費用総額(入学金+4年間の授業料) |
国立大学(4年間) |
約242万円 |
国立大学(6年間) |
約350万円 |
私立大学(文系学部) |
約408万円 |
私立大学(理系学部) |
約551万円 |
私立大学(医歯系学部) |
約2,396万円 |
出典:文部科学省「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」
出典:文部科学省「令和3年度私立大学入学者に係る初年度学生納入金平均額(定員1人当たり)の調査結果について」
また、これらの費用は大学の入学金と授業料のみの値となっており、実家から通う場合を除いて、大学生の生活費なども発生してくることに注意が必要です。
子どもが大学に通いながらアルバイトをする、また奨学金を借りるといった選択肢もありますが、子どもの学生生活や将来に負担となってしまう場合も考えられます。
長いリタイヤ後に備えた老後資金の形成
50代になると現実的なものになってくるのが、老後資金の形成です。
金融広報中央委員会の調査によると、50代の83%が、老後の生活について「心配である」と回答しています。
出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年以降)」
50代が想定している「老後のひと月当たり最低予想生活費」は34万円となっており、「年金支給時に最低準備しておく金融資産残高」は2,187万円となっています。
さらに、50代女性の場合には、女性は男性よりも平均寿命が長い点も、老後資金の形成が不安材料となる点です。
2021年の日本人の平均寿命は、男性が81.47歳、女性が87.57歳となっています。
平均寿命(2021年) |
|
日本人男性 |
81.47歳 |
日本人女性 |
87.57歳 |
つまり、女性は男性よりも約6年長生きすることになりますが、これは老後資金の形成という観点から見ると、女性は6年分多く資金を形成しておかなければいけないということでもあります。
また、平均寿命は若くして亡くなった方も含んだ値であるため、50代女性の場合に想定される平均余命はさらに多くなるというのが実態です。
厚生労働省の「令和3年簡易生命表」によると、50代男女の平均余命は次のようになっており、年齢+平均余命は平均寿命を超えていることが分かります。
平均余命(2021年) |
|
50歳・男性 |
32.93歳 |
50歳・女性 |
38.61歳 |
59歳・男性 |
24.88歳 |
59歳・女性 |
30.21歳 |
平均的な50代女性であれば、90歳までは生きるものと考えて老後資金の形成をする必要があるというのが高齢化社会の厳しい実態です。
親の介護や相続は大丈夫?
50代女性の悩み相談として近年増加しているのが、親の介護や相続といった問題です。
生命保険文化センターの調査によると、「過去3年間に家族や親族の介護経験あり」とした割合は、「55~59歳」から「65~69歳」で高なっており、「55~59歳」では23.3%に達しています。
介護期間は平均61.1ヶ月(5年1ヶ月)となっており、介護に擁した一時費用(住宅改造や介護用ベッドの購入など一時的にかかった費用)は平均74万円、月々の費用は1ヶ月たり平均8.3万円となっています。
介護の平均コスト |
|
介護期間 |
61.1ヶ月(5年1ヶ月) |
介護の一時費用 |
74万円 |
介護の月々の費用 |
8.3万円(合計507.13万円) |
出典:生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」
また、介護が終わってからは、相続という多くの家族を巻き込むイベントも待っており、高齢化社会による多死化が進展していることもあり、50代女性からの相続相談も増加傾向にあります。
FPが50代女性にできる相談事例
FPによる50代女性との相談事例について見ていきましょう。
相談事例1:退職金に関する制度について知りたい
相談
「59歳女性です。現在64歳の夫が、あと1年で40年間勤めた会社を定年退職となります。退職金が老後資金にどの位あてられるかを知りたいのですが、退職金に関する税制度について教えていただけないでしょうか?」
FPの回答
「退職金は退職所得となり、(収入金額-退職所得控除額)×50%で計算されます。相談者様の場合、退職所得控除は800万円×70万円×20年となるため、退職金を手取りに換算しますと○○○○万円程度になると想定されます」
相談事例2:50代女性におすすめの資産形成とは?
相談
「50歳女性です。子どもの教育費や住宅ローンは一段落しましたが、老後資金がほとんど貯まっていません。今から老後資金を貯めていく上で、おすすめの資産形成はないでしょうか?」
FPの回答
「個人の方による資産運用としては、NISAやiDeCoを使って税負担を軽くしてお得に資産運用をする方法が一般的です。女性の場合は、平均寿命が長いため、より長い期間で資産形成ができるNISAを使うことがおすすめです。ただ、NISAを使って資産運用しても元本割れとなるリスクはあるため、全資産を投じるような運用をすることにはリスクがあります」
相談事例3:介護保険の制度について知りたい
相談
「54歳女性。80歳になる母が、要介護3の認定を受けました。公的介護保険として利用できるものについて教えていただけないでしょうか?」
FPの回答
「公的介護制度では、65歳以上の第1号被保険者の方は、所得160万円以下なら1割負担で介護サービスを受けることができます。相談者様のお母様は、要介護3認定されたため、介護老人福祉施設こと特別養護老人ホームを利用することができ、自宅で介護される場合には改修費用の9割が居宅介護住宅改修費として支給される制度を利用可能です」
50代女性のお金の悩みは気軽にFPに相談してみましょう
この記事では、50代女性が抱えるお金の悩みについて解説した上で、50代女性がFPに相談した際の具体的な相談事例についてもご紹介してきました。
50代は、正社員としての平均給与が最も高くなる年代ですが、子どもの大学進学による教育費負担が発生しやすく、老後資金の形成に向けたラストスパートとなる重要な年代です。
50代女性は、平均寿命が男性よりも長いため老後資金の形成がより重要となり、親の介護や相続を不安に思う方も少なくありません。
ただ、近年は「人生100年時代」や「老後2,000万円」といったワードで老後の不安を煽る情報も多くなっており、誰にも相談せず、自分一人で考えてリスクの高い投資情報などに飛びついてしまうこともリスクとなっています。
FPは介護や相続に関する相談もでき、ライフプランを作成するなどすれば不安が解消されることも少なくないため、お金の悩みを持つ50代女性の方は気軽にFPに相談してみましょう。