高齢化社会と経済:老後資金問題の背景を理解する

少子高齢化が深刻化する現在の日本は、今後の経済発展や公的年金制度に不安を与える一方です。とくに、現在の公的年金制度は、現役世代が高齢者を支える仕組みであるため、少子高齢化が与える影響は大きいです。

もし、このまま少子高齢化が進んだ場合、公的年金制度のみでの老後生活は不可能となります。そのため、人生100年時代を生き抜くためには、自助努力が必要不可欠です。

この記事では、少子高齢化の現実と今後の展望、老後の資金問題を解決するための方法について詳しく解説します。

目次

少子高齢化社会の現実と今後の展望

老後の生活資金確保として、最も重要なものは「公的年金」です。現在の公的年金は、現役世代が年金受給者を支える賦課方式を採用しているため、少子高齢化が進めば、年金制度そのものに影響が出る可能性があります。

現在の日本は急速に少子高齢化が進んでおり、とても深刻な状態が続いています。実際、2022年時点で65歳を超える高齢者の割合は、29.1%です。

今後、第二次ベビーブーム(1971年〜1974年)に生まれた世代が65歳以上になるときには、日本全体の35.3%が65歳以上の高齢者になると考えられています。

現在でも約3.3人に1人が65歳以上の高齢者という深刻な状況であるにも関わらず、今後は3人に1人以上の状況となる可能性があるのです。

WHOおよび国連では、65歳以上(高齢者)の人数が総人口の21%を超えた場合は、「超高齢化社会」と定義しています。日本の場合は、この数字を遥かに超えており、とても深刻な状況が続いています。

また、2022年の出生数は80万人を割り、過去最低となりました。今後、さらに少子高齢化が進むことが懸念され、年金制度そのものの存続自体も危ぶまれています。

老後の平均生活資金と平均収入

公的年金のみでの生活が難しい現在の日本では、自分自身で生活資金を蓄えたり稼いだりしなければいけません。実際に自分たちが高齢者になった際に必要なおおよその生活資金と主な収入源は以下のとおりです。

60歳〜69歳 288,312円
70歳以上 226,383円
 

参考:家計調査報告(P7)|総務省統計局

公的年金は原則65歳から受給することができます。一般的な世帯で受け取れる老齢基礎年金は、約22万円です。つまり、上記支出通りの生活を送っていた場合、65歳から69歳までの間は、家計収支で毎月約68,000円のマイナスとなります。

70歳以降は毎月約6,000円程度不足することがわかります。仮に、夫婦で85歳まで生存した場合、老後に不足する金額は以下のとおりです。

①:68,000円×60か月=408万円
②:6,000円×192か月=約115万円
③:①+②=約523万円

仮に、平均通りの支出で一般的な老齢厚生年金を受給できた場合は、約523万円程度不足する可能性があることがわかりました。ただ実際は、老齢厚生年金の金額が少なかったり、支出が多かったりすることにより、さらに多くの不足金額が発生する可能性があります。

また、現段階では何ら問題なく年金は支払われていますが、今後さらに少子高齢化が進んだ場合、年金の減額や受給年齢引き上げが行われるでしょう。そうなると、さらに不足額は増えるため、できるだけ多くの資金準備が必要です。

老後資金問題を解決するための対策

老後の生活を豊かにするためには、老後資金問題を解決しなければいけません。これからは、公的年金制度のみに頼ることは難しいため、可能な限りの自助努力を進めていく必要があります。

具体的には、以下のような方法が老後資金問題解決に有効です。

  • ライフプランを作成する
  • 生活費の見直しを行う
  • 再雇用等を検討する
  • 公的年金の繰下げ受給を検討する
  • 積極的な資産運用を検討する

次に、老後資金対策として有効な方法について解説します。

ライフプランを作成する

老後のライフプランを作成し、必要となる老後資金を洗い出しましょう。基本生活費の計算はもちろん、老後にやりたいことなどもすべて書き出します。

たとえば、「定年退職後は、夫婦で毎年旅行に出かけたい」「自宅をリフォームしたい、バリアフリー化しておきたい」などです。また、これらにかかる費用もおおよそで確認しておきます。

また、支出の他に収入源を確認しておきます。公的年金や貯蓄額などをすべて洗い出し、向こう数十年(平均寿命の年数程度)までのプランを作成します。そして、過不足を確認しましょう。

もし、不足がある場合は対策が必要です。不足が発生しない場合は、現段階では現状維持のままで問題ありません。

なお、ライフプランはFPに相談することで、作成・アドバイスを行ってもらえます。「自分で作成するのが難しい」、「専門家に的確なアドバイスをもらいたい」という人は、ぜひ相談されてみてはいかがでしょうか。

生活費の見直しを行う

ライフプランを作成した結果、不足が発生する場合は初めに生活費の見直しを行いましょう。何か減らせるもの、削れる部分はないか、といったところに注目してみてください。

たとえば、食費や光熱費は考え方や努力で改善できる場合が多いです。その他、娯楽費なども見直しをすることで改善できるかもしれません。削れる部分は積極的に削り、妥協できないところはしっかり予算確保をする、といったようにメリハリをつけることが大切です。

再雇用等を検討する

定年退職後も働くことができるのであれば、再雇用を検討しましょう。公的年金の受給年齢は、原則65歳からです。一方で、日本の企業の多くは、定年退職年齢を60歳と設定しているため、5年間の生活資金を確保するためです。

公的年金は、60歳から繰り上げ受給することもできますが、1か月あたり0.4%(最大24%)も減額されてしまいます。そのため、働けるのであれば、働いて生活費を確保したほうが老後資金問題に有効です。

公的年金の繰下げ受給を検討する

公的年金は原則65歳から受給できますが、最長75歳まで繰下げ受給することができます。繰下げ受給をした場合、1か月あたり0.7%(最大84%)も多く公的年金を受給できるため、老後資金問題にとても有効です。

もし、体力的に働けるのであれば、最大75歳まで働き続け、公的年金の受給時期を繰下げてみてはいかがでしょうか。

積極的な資産運用を検討する

資金的に余裕があるのであれば、積極的な資産運用を検討されてみてはいかがでしょうか。老後資金を考える上で、資産を減らさないことはとても大切です。しかし、資産を増やしていくことも考えていかなければいけません。

資産運用を目的とした金融商品には、さまざまなものがあります。老後資金確保を目的としているのであれば、安全性を確保しつつ、より高い運用率を目指した金融商品を検討されてみてはいかがでしょうか。

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