【高齢者と家計】日本の家族が直面する新たな課題

目次

この記事の要約

日本の高齢化率(2022年)は29.1%と過去最高を更新しており、高齢者就業率も25.2%と年々高くなっています。

高齢者の生活は年金収入だけでは不足してしまうため、生活費を見直すことも重要です。

高齢者になると、生活費に加えて、介護・医療負担が増えることも避けられません。

後期高齢者の介護・医療負担は原則1割となっており、「高額介護サービス費」「高額療養費制度」があるため自己負担は低く抑えられていますが、現役世代の社会保険料負担が重いため、今後は負担増になる可能性が小さくありません。

今後は多くの家庭で、高齢者と家計に関するコミュニケーションを取る機会が増えてきますが、無理強いはせず過度の負担を迫らないようにすることがポイントです。

高齢者生活のリアルとは?

総務省は2023年の「敬老の日」に合わせて、高齢者人口および高齢者の就業者数を発表しました。

出典:総務省 統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-

日本の高齢化率は29.1%で過去最高となり、75歳以上人口が初めて2,000万人を超え、日本の高齢者人口割合は世界最高となっています。

また、高齢者の就業率は912万人と過去最多となっており、高齢者就業率は2022年には25.2%と過去最高を更新しました。

出典:総務省 令和4年就業構造基本調査

高齢者の就業率が上がっている背景には、年金収入だけでは生活費をまかなえないという現実的な問題があります。

総務省が発表した「家計調査 2022年(令和4年)平均」によると、65歳以上の夫婦のみ高齢者世帯の1ヶ月の平均消費支出は236,696円となっており、不足分は22,270円となっています。

出典:総務省 家計調査 2022年(令和4年)平均

ただ、働く高齢者が増えている背景には、「健康を維持するため」や「働くことに生きがいを感じているため」といったポジティブな面もあり、一概に経済問題だけとは言い切れません。

出典:日本労働組合総連合会 高齢者雇用に関する調査2020

老後の資産計画は大丈夫?生活費見直しのポイント

総務省の「家計調査 2022年(令和4年)平均」によると、年金収入の平均額は、65歳以上の夫婦のみ世帯は220,418円、65歳以上の単身世帯は121,496円となっています。

出典:総務省 家計調査 2022年(令和4年)平均

厚生年金と国民年金によって違いがあり、厚生労働省の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金は145,665円、国民年金は56,368円となっています。

出典:厚生労働省 令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

国の年金財政は厳しく、今後は年金の支給額が増える見通しは持てません。

老後に備えて、生活費を見直せないかを考えてみましょう。

家計簿を付けて支出を見直す

家計簿を付けて、支出を見直すことは、全ての世代にとって有効な節約方法です。

特に、高齢者となり年金生活になると、収入が大きく減ることには注意が必要です。

平均収入が高かった50代と同じような生活を続けていては、家計はたちまち破綻してしまうことになりかねません。

デジタル化に適応する

高齢者が、デジタル化に適応することは、今後の日本の将来を左右するとすら言ってよいほど重要なことです。

国のマイナンバー政策などはセキュリティ面で課題が残るものの、デジタル化を推進することによって、社会全体の生産性が上がることは確かです。

個々の家庭で見ても、キャッシュレス決済を使ってポイントを貰うようにする、保険はコストが安いダイレクト型にする、証券会社はネット証券を使うなど、できることが少なくありません。

現金で支払うとポイントは貯まりませんが、クレジットカードや電子マネー、QRコード決済といったキャッシュレス決済を使うとポイントが貯まるためお得です。

ダイレクト型保険やネット証券といった、対面ではなくインターネットから申し込める保険や証券会社にすれば、手数料を大きく節約できます。

高齢者にとっては、デジタル化に適応することには抵抗があるかもしれませんが、生活コストを削る効果が期待できるとともに、人手不足の社会にとっても有益です。

介護や医療はいくら必要かを予習しておこう

高齢者のお金の問題としては、生活費に加えて、介護・医療が挙げられます。

高齢者と家計の問題で避けては通れない、介護・医療負担の実態について押さえておきましょう。

高齢者の介護費の平均値

生命保険文化センターの「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査(速報版)」によると、月々の介護費用は平均83,000円、介護期間は平均5年1ヵ月となっています。

※出典:生命保険文化センター 2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査(速報版)

さらに、介護用ベッドや住宅改築といった一時的な介護費用は平均740,000円となっているため、総額では580万円以上(83,000円×5年1ヵ月+740,000円=5,803,000円)と算出されます。

この数字は、公的介護保険サービスを利用した上での平均値です。

介護費用は、65歳以上が対象となる第1号被保険者を対象に、市町村から要介護・要支援認定を受けると、介護費用が最低1割負担(収入があると最大3割負担)となります。

また、自己負担額が限度額を超えた場合には、「高額介護サービス費」として払い戻しを受けることができます。

高齢者の医療費の平均値

厚生労働省の「年齢階級別1人当たり医療費(令和元年度)(医療保険制度分)」によると、高齢化が進めば進むほど医療費が高くなる傾向が明らかです。

出典:厚生労働省 年齢階級別1人当たり医療費(令和元年度)(医療保険制度分)

平成30年度における、75歳以上の後期高齢者1人当たり医療費は94.2万円となっています。

出典:厚生労働省

ただ、後期高齢者が加入する国民健康保険においては、75歳以上の後期高齢者の自己負担額は原則1割(現役並み所得者は3割負担)となっているため、負担額は現役世代並みに抑えられています。

上図で見ても、高齢者の自己負担額は7~9万円の範囲に収まっており、現役世代の自己負担+保険料に比べても高齢者の負担が軽くなっていることは明らかです。

また、日本の医療制度には「高額療養費制度」があり、1ヶ月に支払う医療費が自己負担限度額を超えた場合に、その超過分が払い戻されて負担が抑えられます。

後期高齢者の一般所得者の場合、個人では月18,000円(年間14.4万円)、世帯では月57,600円が自己負担の上限となっています。

出典:厚生労働省 高額療養費

社会保険料負担が政治課題となりつつあることには注意が必要

日本では、介護・医療ともに1割負担となるため、高齢者の負担額はそれほど大きな金額にはなりません。

ただ、今後の展開には注意が必要です。

2023年10月には、政治の動きとして減税が大きなテーマとなりましたが、同時に現役世代が負担している社会保険料の大きさも注目されました。

高齢化の進展により、現役世代の社会保険料負担は過大になっていることから、今後は高齢者の介護・医療負担が原則3割になる展開もあり得るものと考えられます。

少なくとも、高齢者の介護・医療負担が、これから増えることはあっても減ることはないと認識しておくことが重要です。

高齢者と家計に関するコミュニケーションを取るポイント

今後も高齢化が進む日本では、高齢者家族を持つ多くの世帯にとって、高齢者と家計に関するコミュニケーションを取る機会が増えてくることは避けられません。

高齢者と家計に関するコミュニケーションを取る上でのポイントを押さえておきましょう。

無理強いはせず過度の負担を迫らないようにする

社会保険料の増大や介護離職など、高齢化の進展を受けて、現役世代の負担は重くなっています。

ただ、だからといって、高齢者に過度の負担を強いてしまうと、家庭全体がギクシャクしてしまうことにもなりかねません。

まずは、利用できる公的な介護・医療サービスを調べるなど、できる範囲のことから無理のないペースで高齢者とコミュニケーションを取るようにしましょう。

投資トラブルや詐欺などには注意が必要

高齢者が退職金を使って、投資を始めようとするケースもあるかと思いますが、止めた方が賢明です。

高齢者は退職してしまうと、暇を持て余すようになってしまうため、お金の不安から投資を始めようと思ってしまうかもしれません。

インデックス投信への分散投資といった比較的安全な投資ならまだしも、デイトレードやスイングトレードといった日中の暇を解消する投資は非常に危険です。

また、昨今は高齢者を狙った投資詐欺が増加傾向にあることにも注意しておきましょう。

高齢者との家計コミュニケーションもFPに相談してみよう

この記事では、高齢者の生活費や家計負担について解説した上で、高齢者との家計コミュニケーションについて取り上げてきました。

高齢者の生活は、年金収入で、生活費に加えて介護・医療負担もまかなう必要があります。

現在は、75歳以上の後期高齢者の介護・医療負担は原則1割となっており、「高額介護サービス費」「高額療養費制度」で自己負担は低く抑えられています。

ただ、現役世代が負担する社会保険料負担は限界に達しつつあることから、高齢者の医療費は原則3割負担になるなど、今後は負担が増加する可能性があります。

高齢化日本では、多くの人が高齢者家族との家計コミュニケーションを取る必要に迫られることになりそうですが、無理強いはしないように注意しましょう。

高齢者との家計コミュニケーションをする上では、FPに相談するのも一つの方法です。

目次