高額療養費制度とは、1ヶ月間の医療費が一定の額を超える場合に一部の払い戻しが受けられる制度です。
聞いたことはあるものの、制度をきちんと理解できていない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、高額療養費制度の仕組みや自己負担限度額、申請方法などをまとめました。
高額療養費制度を利用する際の注意点も解説しますので、参考にしてください。
高額療養費制度とは
高額療養費とは、1ヶ月間に病院や薬局で支払う医療費が一定の額を超える場合に、超過分が払い戻される制度のことです。
自己負担の上限額は、年齢や所得によって決まります。
自己負担限度額はいくら?
70歳以上と70歳未満で、自己負担限度額の計算方法が異なります。
70歳未満の方の自己負担限度額は上記表のとおりです。
70歳以上の方は計算方法が異なるため注意してください。
医療費の負担を軽減させられる「多数回該当」もあります。
1年に3回以上高額療養費として払い戻しを受けた場合は、多数回該当となり4回目以降の自己負担限度額がさらに引き下げられるというものです。
さらに、自己負担額は世帯で合算できます。
ただし、70歳未満の場合、合算できるのは自己負担額が21,000円以上のものに限定されるため注意しましょう。
高額療養費の申請方法
高額療養費の申請方法を確認しましょう。
なお、高額療養費の申請の時効は2年間です。
必ず2年以内に手続きする必要があるので注意してください。
【国民健康保険の場合】
高額療養費に該当する場合、治療を受けてから約3ヶ月後に「国民健康保険高額療養費支給申請書」が自宅に届きます。
必要事項を記入のうえ、必要書類を添付して返送しましょう。
医療費の領収書の写しが必要なので、保管しておいてくださいね。
【健康保険の場合】
次に、健康保険の場合の申請方法を確認しましょう。
協会けんぽの場合、都道府県支部に「健康保険高額療養費支給申請書」を提出することで払い戻しが受けられます。
国民健康保険と同様に、医療機関で受け取った医療費の領収書が必要な場合もあるため、保管しておきましょう。
詳しい申請方法は、加入している健康保険組合や共済組合に問い合わせましょう。
スムーズに払い戻しを受けるためにも、漏れなく確実に申請してくださいね。
高額療養費制度の注意点
高額療養費制度には注意点もあります。
・払い戻しまでに期間がかかる
・食事代や先進医療などは高額療養費の対象外
以下で詳しく解説します。
【払い戻しまでに期間がかかる】
高額療養費の申請から支給までは、3~4ヶ月程度かかります。
各医療保険で審査が行われたうえで支給されるため、病院の窓口でいったん全額を支払っておかなければなりません。
後から払い戻されるとはいえ、数ヶ月間立て替えなければならないため、一時的な負担は大きいものになります。
医療費を支払うお金がないときは、高額医療費貸付制度の利用も検討しましょう。
高額医療費貸付制度を利用すれば、高額療養費が支給されるまでの間、無利子で高額療養費で支給される見込額の8割相当額を借り入れられます。
[限度額適用認定証なら立替払いが発生しない]
医療費が高額になりそうだと分かっていれば、事前に限度額適用認定証を利用しましょう。
限度額適用認定証と保険証を医療機関の窓口で提示すれば、一時的に立て替える必要がありません。
窓口で支払う金額が自己負担限度額までとなります。
なお、通常大学病院などの規模で治療を受ける際には、事前に窓口で限度額適用認定証について詳しく教えてくれます。
救急での入院以外は、説明を受けた際に申請すれば十分間に合いますので安心してください。
【食事代や先進医療などは高額療養費の対象外】
高額療養費の対象となるのは、公的医療保険が適用される費用に限られています。
そのため、以下のような費用は対象外です。
・先進医療
・入院中の食事代
・差額ベッド代
・インプラント
・レーシック など
特に、先進医療の費用は高額になりがちで、なかには数百万円かかるケースもあります。
先進医療とは、厚生労働大臣が認めた高度な医療技術のことです。
がん治療の際に行われる重粒子線治療などがあります。
先進医療は高額療養費の対象外となるため、全額自己負担しなければなりません。
先進医療への備えは、民間医療保険の先進医療特約を検討しましょう。
数百円程度の保険料で先進医療特約をつけることができ、実際にかかった先進医療の技術料と同額の保険金が支払われるのが一般的です。
医療費控除が使える場合も
医療費が高くなった場合、医療費控除が受けられる可能性もあります。
医療費控除は所得控除の1つで、1年間の医療費が10万円を超えた場合(所得の合計が200万円までの方は5%)に、超えた分を所得から控除できるというものです。
1月1日~12月31日の間に、本人や扶養する家族のために支払った医療費が対象となります。
ただし、保険金や高額療養費などで補てんされる金額は差し引かなければなりません。
10万円を超えた分だけ所得が少なくなるため、所得税・住民税の負担が軽減されます。
10万円を超えた額がそのまま戻ってくるわけではないので、注意しましょう。
なお、医療費控除を受けるためには、確定申告の手続きが必要です。
医療機関で受け取った領収書は、確定申告の際に提出する必要はありませんが、5年間保管しておかなければなりません。
まとめ
1ヶ月間の医療費が高額になる場合、自己負担限度額を超過した分について払い戻しを受けられるのが高額療養費制度です。
さらに負担が少なくなる方法として、多数回該当や限度額適用認定証、高額医療費貸付制度などもあります。
高額療養費制度について理解したうえで、公的な保障だけでは足りない部分をまかなうものとして民間の医療保険などを検討しましょう。