60代といえば、定年退職を迎える年代であり、いよいよ老後の生活が本格的に始まる時期です。
それだけに60代男性は、この年代ならではのお金の悩みを抱えやすい傾向にあります。
しかし繊細な話題であるため、周囲の人とはなかなか悩みを共有しづらいものです。
そこで今回は、世間一般の60代男性がどのようなお金の悩みを抱えているのかをまとめました。
「こんなことを悩んでいるのは自分だけだろうか」「こんな不安をみんなはどうやって解消しているのだろう」といった思いを抱えている方は、ぜひご一読ください。
令和時代の60代男性は「今」をどう過ごしている?
具体的な悩みの内容を知る前に、まずは現代における60代男性の暮らしについて、傾向を確認してみましょう。
昭和から平成、令和と3つの時代を駆け抜けてきた60代男性は、働き方はもちろん、ライフスタイルすべてが大きく移り変わってきたことを実感しているのではないでしょうか。
仕事の面に関しては、昔は60歳で定年退職を迎え、いわゆる隠居生活となるのが一般的でした。
それが現代では、定年退職をせずに働いている方や、定年退職後に再就職する方も増加。
60歳以上の男性就業者数は約846万人、65歳以上に絞っても約538万人が何らかの形で働き続けています。
働き続ける理由としては、収入のためを挙げる方ももちろん多いですが、趣味のためや健康のためといった理由も多く、「心身ともに人生をより豊かにするため」に働く方も増えているのが現代の特徴です。
そのような背景もあってか、現代の60代男性は昔に比べてパワフルかつ、仕事よりもプライベート重視の傾向が強いといいます。
参照:総務省統計局 労働力調査(2022年)第16表 年齢階級別就業率
参照:花王株式会社 生活研究者センター くらしの現場レポート(2018年)
現代の60代男性が抱えやすい悩み
現代の60代男性が抱えるお金の悩みは、「老後資金の工面方法」と「相続対策」で二極化する傾向にあります。
というのも、現代では60代であっても世帯ごとの貯蓄格差が大きいためです。
60代以降は家の建て替えが必要になったり、病院にかかることが増えたりなど、出費が増えやすく、思っていたよりも貯蓄が減り、慌てる方も少なくありません。
一方、貯蓄額が十分以上にある世帯では、相続に向けて、税金対策や争族対策に関して悩むことも多いでしょう。
また、「いくつまで働くべきか」「働くのを辞めてしまって家計は大丈夫なのか」といった悩みに関しては、貯蓄額に関係なく、多くの男性が抱える悩みだといえます。
参照:金融広報中央委員会 家計の金融行動に関する世論調査(2022年)
具体的な相談事例(62歳・男性・既婚・貯金2,100万円)
ここでは、弊社に寄せられた相談事例を基に、相談者のモデルケースをご用意しました。考えられる対策例についてもご紹介します。
相談者プロフィールおよび相談内容
- 名前:竹中 清
- 年齢:62歳
- 性別:男性
- 貯蓄:2,100万円(普通預金)
- 収入:月35万円(手取り)、年収500万円
- 支出:月平均30万円
- 年金予定額:世帯合計で月22万円前後(65歳で受給開始)
- 正社員、専業主婦の妻(62歳)と同居、子ども2人は独立済み
竹中さんは継続雇用制度を利用し、現在も正社員として変わらず勤務をしています。
これまでは老後資金に関して特に不安を抱えていませんでしたが、一昨年、持ち家を建て替えたことで貯蓄が大幅に減少。
老後「2,000万円問題」を耳にしていたこともあり、「このままでこの先は大丈夫なのだろうか」と悩み始めたといいます。
竹中さんは、体力の衰えを感じていることから、なるべく早くにパートタイムやアルバイトといった働き方に移行して、「マイペースな暮らしがしたい」と以前から考えていました。
しかし老後資金に対する不安から、現職を辞められない日々だといいます。
不安を払拭するための対策として竹中さんは、投資を始めることも考えていますが、そのきっかけは「周りから資産運用に関する重要性を説かれることが増えてきたから」というものです。
これまでは普通預金しか利用したことがなく、資産運用の知識は一切ないことから、この状況で相談にいって大丈夫なのかが心配で一歩を踏み出せないでいます。
悩みをそのままにした場合に起こり得るリスク
- お金に関する不安につきまとわれ続け、有意義な老後生活を送りづらい
- 無理に働き続けた結果、健康寿命を減らしてしまう
- 知識がない状態での投資スタートにより、かえって貯蓄を減らしてしまう
相談内容に応じた対策例
このような「老後資金に対するばく然とした不安」を抱えて、弊社にご相談いただく60代の方は男性、女性ともに多くいらっしゃいます。
しかしどのようなケースでもいえるのが、「まずは落ち着いて人生計画を見直そう」ということです。
焦って金融資産を購入したり、不安を抱えたまま働き続けたりすることは避けるのが無難でしょう。
「いくら必要なのか」「どう増やしたり維持したりするべきなのか」といった知識が十分にないままでやみくもに動きだしては、かえってリスクを増やしかねません。
60代であれば、ひとまず80歳を迎えるまでの人生計画を立ててみましょう。今の収支のまま生活を続けた場合、20年後の貯蓄はいくらになるでしょうか。
こうして長期的な人生計画を立てれば、現在の問題点が把握でき、具体的な対策も考えやすくなります。
思ったよりも貯蓄額が少なかったという場合には、「あと何年働けば十分か」や「家計や保険に見直せる点はないか」など、さらに細かな試算をして、人生計画を立て直しましょう。
一方、思ったよりも貯蓄額が多かったという場合にも人生計画を立て直すことで、より豊かな老後を送れるようになるでしょう。
いずれにせよ具体的な対策に動き出すのは、人生計画をきっちりと立て直してからがおすすめです。
大切なのは、先々を見据えた人生計画と準備
お金の悩みを解消するためには、まずは「長期的な視点で見た家計の問題点」を把握することが大切です。
そのうえで対策を考え、実行に移すことになりますが、現代ではさまざまな選択肢が用意されています。
しかし対策を考えるのが遅くなればなるほど、準備期間がなくなり、選択肢の柔軟性は減ってしまいます。
「理想の老後生活を送るうえでより適した対策を選びたい」のであれば、なるべく早くに先々を見据えた人生計画を立て、準備を始めましょう。
人生100年時代の今、60代からでも人生計画は遅くありません。
「物価の上昇値まで含めたより正確な人生計画を立てて、万全に期したい」「収支の改善や資産運用のために専門知識を貸してほしい」といった場合には、FPもぜひご活用ください。