「今は元気だけど、老後は病気にかかるかもしれない」と、老後の医療費について心配する人は多いのではないでしょうか。病気やケガのリスクは高齢になるほど高くなっていきます。仮に、手術や入院が必要になると高額な医療費がかかり、生活の負担になるかもしれません。
ここでは、老後にかかる医療費や介護費と自己負担額について分かりやすくお伝えします。老後を迎える前に医療費について考え、今から老後生活の準備をしていきましょう。
老後にかかる医療費と自己負担額
厚生労働省が発表した「医療保険に関する基礎資料」によると、一人当たりの生涯の医療費は2,800万円で、その半分以上は70歳以降にかかっています。
出典:厚生労働省 医療保険に関する基礎資料5.(13)-1-49
老後にかかる医療費
一人当たりの医療費は、50代後半では約22万円程度ですが、60代後半で約36万円、70代後半では約59万円と年齢とともに医療費は増加していきます。以下は、50歳以上の年間の医療費を、厚生労働省の同資料からまとめたものです。
50〜54歳:175,259円
55〜59歳:222,166円
60〜64歳:282,061円
65〜69歳:361,233円
70〜74歳:462,508円
75〜79歳:593,039円
ただし、多くの人は健康保険に加入しているため、自己負担額は原則として医療費の3割です。例えば、69歳までは3割負担、70歳から74歳は原則2割、75歳以上は原則1割と負担額は減少します。
上記の年齢別の医療費から、65歳以降の1年あたりの医療費の自己負担額を以下にまとめました。
65〜69歳:108,366円
70〜74歳(2割負担の場合):92,501円
75〜79歳(1割負担の場合):59,303円
2022年から75歳以上で一定以上の所得のある人の自己負担割合が2割に増えるなど、これからの医療費は高くなっていく可能性があります。医療費が高くなっていくことも想定し、老後資金を準備しておくことが大切です。
老後の高額療養費制度の自己負担限度額
手術などで医療費が高額になったとしても、「高額療養費制度」を利用すれば、決められた自己負担限度額までの支払いで済みます。「高額療養費制度」とは、窓口で支払った医療費が自己負担限度額を超えた場合に、一定のお金が還付される制度です。
高額療養費制度の自己負担限度額は、年齢と所得に応じて決められています。例えば、70歳の年収370万円未満の人で、100万円の医療費がかかった場合、健康保険のみだと20万円の負担です。しかし、高額療養費制度を利用すると、ひと月の自己負担額は44,400円となります。
老後にかかる介護費と自己負担額
在宅サービスや介護施設サービスの利用料は、公的介護保険が適用されます。以下は、在宅サービスを利用する際のひと月あたりの支給限度額です。
要支援1 |
50,030円 |
要支援2 |
104,730円 |
要介護1 |
166,920円 |
要介護2 |
196,160円 |
要介護3 |
269,310円 |
要介護4 |
308,060円 |
要介護5 |
369,650円 |
また、介護保険には「高額介護サービス費」制度があります。「高額介護サービス費」のひと月あたりの自己負担限度額は、次の通りです。
課税所得690万円以上(年収約1,160万円)以上 |
140,100円(世帯) |
課税所得380万円以上(年収約770万円)〜690万円以上(年収約1,160万円)未満 |
93,000円(世帯) |
市町村民税課税〜課税所得380万円以上(年収約770万円)未満 |
44,400円(世帯) |
世帯全員が市町村民税非課税 |
24,600円(世帯) |
①生活保護を受給している方 ②前年の公的年金等収入金額+その他の合計所得金額の合計が80万円以下の方等 |
①15,000円(世帯) ②15,000円(個人) |
出典:厚生労働省 高額介護サービス費の負担限度額が見直されます
上記の表から分かるように、本人の所得だけでなく、同世帯の家族の所得も自己負担限度額の決定に影響することを覚えておきましょう。
この他にも、医療費と介護費の合計が高額になった際、一定額が還付される「高額介護合算療養費制度」があります。高額介護療養費制度の自己負担額もまた、収入と年齢に応じて決められています。
今後、高額療養費制度と同様、介護サービス費の上限額なども引き上げられていくかもしれません。老後を迎えてから、介護費用について慌てなくていいよう、早めに準備をしておきましょう。
老後の医療費を準備するために今からできること
「老後は年金収入のみになるけど、それだけでは老後生活が不安」という方は、今から準備しておきましょう。今から老後の医療費を準備するためにできることは、次の2つです。
- 医療保険の加入、見直し
- 自動積立定期預金、つみたてNISAなどを利用する
すでに保険に加入している方は、保障内容は十分か、保険料は高すぎないかなどを確認します。健康保険制度で負担額が下がることなどを考え、医療保険が不要だと感じたら保険を解約することも1つの選択肢になるでしょう。
一方で、「貯金があまりなく、老後が不安」という方は、掛け捨ての医療保険で備えておくことをおすすめします。保険に加入しておくことで入院や手術でまとまったお金が必要なときに、安心できるからです。
また、自動積立定期預金やつみたてNISAなどで老後の資金準備を始めるという方法もあります。自動積立定期預金ならば、自動的に貯蓄用口座に貯めていくことができるため、無理なく続けられます。
つみたてNISAは少額からコツコツと資産づくりができる制度です。20年間と期間も長いため、少しずつ老後の準備をしていきたい人に向いていると言えます。
早い段階から老後の医療費について考え、必要な老後資金を準備していきましょう。