長生きすることがリスクと捉えられる昨今において、いかにして老後を楽しく、充実して過ごせるかは「備え次第」であると考えられます。長生きリスクの大きな課題は、資金問題であるため、対策を検討して実行しておくことが大切です。
今回は、長寿リスクの現実や課題、長寿化に向けた準備方法について詳しく解説します。
長寿リスクの現実
日本は、世界的に見ても平均寿命が長い「長寿大国」として知られています。2022年の平均寿命は男性が81.49歳、女性が87.6歳です。
今後数十年の間でさらに平均寿命は伸び続け、2050年には男性が84.02歳、女性が90.4歳になると言われています。また、同時期には100歳以上の人数が100万人を超えると予想されています。
これまでは、長生きすることが「喜ばしいこと」や「幸せなこと」と認識されていました。しかし、現在の日本においては「長生きすることが人生のリスク」と捉えられるようになりつつあります。
このように言われるようになった大きな原因は、少子高齢化です。
長生きリスクの1番の問題点は、長生きをすることによる老後資金の不足です。これまでは、公的年金制度のみでも老後の生活を十分に送ることができたため、特に心配をする必要はありませんでした。
しかし、現在の公的年金制度は現役世代から保険料を徴収し、受給者世代の生活を支える賦課方式を採用しています。その結果、少子高齢化による財源不足に陥り、公的年金制度のみでの生活は苦しくなっているのが現実です。
さらに、インフレの影響も受け、さらに老後資金が不足する可能性があります。そのため、長生きをすればするほど老後の資金不足が加速したり、現役世代の負担が増えたりなど、さまざまなリスクが懸念されています。
長寿化リスクに伴う大きな課題とは
長寿化リスクの大きな課題は、老後の資金不足問題です。老後に備えて潤沢な資金を蓄えていたとしても、高齢化に伴い以下のような費用が発生し、結果的に資金不足に陥る可能性があります。
- 基本生活費
- 医療費
- 介護費
現在の物価で計算をして潤沢な資金を蓄えていたとしても、インフレの影響を受けることによって基本生活費が不足する可能性があります。
また、高齢化に伴い病気や怪我のリスクが高まり、医療費の支出も増えていくことが考えられます。さらに、病気や怪我による介護、あるいは認知症等による介護の影響も出てくるでしょう。
高齢になると体力的にも働くことが難しくなり、収入は減る一方です。しかし、現役時代よりも支出は増える傾向です。そのため、長生きをすればするほど老後の資金が不足し、大きな課題となります。
長寿リスクに備える5つの方法
長生きをすることがリスクであると言われる日本において、経済的な備えを検討・実行しておくことはとても大切です。
今後の長寿化リスクに備える方法として、以下の方法を検討されてみてはいかがでしょうか。
- 長期的な資産運用
- 公的年金の繰下げ受給
- 定年退職後も働く
- 健康寿命を伸ばす基礎体力を身につける
- 終身型の保険に加入する
それぞれ詳しく解説します。
長期的な資産運用
老後の資金確保を目的として、長期的な資産運用を検討されてみてはいかがでしょうか。
現在、満足な資金を保有していたとしても、インフレリスクなどを考えると金融商品で所有して運用しているほうが良いです。また、数%程度の運用率で長期的に運用しておけば、安定した収入を手に入れることもできます。
ただし、運用を行うにあたってリスクは発生します。そのため、安全性も考慮しながら上手な運用を目指していくと良いでしょう。
公的年金の繰下げ受給
公的年金制度は原則65歳から受給可能ですが、受給年齢を最大で75歳(120か月)まで繰り下げることができます。
繰下げ受給は1か月単位で可能であり、繰下げによる増加率は0.7%です。仮に、最大120か月繰り下げた場合は、84%増加します。たとえば、年金受給額が15万円だった場合は、276,000円受給できる計算です。
公的年金の繰下げ受給は1か月単位で可能であるため、たとえば「定年退職後も働き、70歳まで働くからそれまでは繰り下げよう」などの検討が可能です。
定年退職後も働く
日本の企業の定年退職年齢は60歳がもっとも多く、次いで65歳が多いです。しかし、60歳から65歳の人であれば、体力的にも「まだまだ働ける」と感じている人も多いのではないでしょうか。
そういった人は、再雇用制度の活用や転職などを行って働き続ける方向で検討されてみてはいかがでしょうか。定年退職後も働き続けることにより、公的年金の繰下げ受給も可能です。
健康寿命を伸ばす基礎体力を身につける
健康寿命を伸ばすための基礎体力を身につけることも大切です。
そもそも、長寿化リスクとして有効な手段は、収入を増やしたり用意したりしておくこと、支出を減らすことの2つです。健康寿命を伸ばすことにより両方をカバーすることができます。
たとえば、健康で基礎体力がある人であれば、長く働き続けることができるため老後も安定した収入を得られます。また、健康な人は医療機関へいく機会も少なく、認知症リスク等も低いです。
上記のことから、収入を増やして支出を減らすことができるため、健康寿命を伸ばすことはとても大切であると言えます。
終身型の保険に加入する
長寿化リスクの備えとして、医療や介護に対する備えは必要不可欠です。また、高齢化に伴い医療・介護のリスクは高まります。そのため、終身型の医療保険や介護保険への加入は検討しておいたほうが良いです。
しかし、保険に加入することばかりに意識を向けていると、保険貧乏(保険料が高すぎて家計を圧迫すること)になり得ます。そのため、前提としてバランスよく加入することが大切です。
終身型の医療保険は一生涯保障を受けられる一方で、保険料は割高になります。中には、80歳などの更新のタイミングで一気に保険料が上がる保険商品もあるため注意しなければいけません。
長寿化リスクの備えとして、一生涯保障を受けられる保険商品は大切ですが、バランスを見極めて加入を検討すると良いでしょう。