年金制度を理解しよう!ファイナンシャルプランナーが解説する基礎知識とポイント

年金は老後の生活を送るために必要な制度です。また、老後だけでなく、加入者が障害を負ったときや死亡した時にも給付を受けられます。公的年金制度には、国民年金と厚生年金がありますが、「制度の仕組みについてはよくわからない」という人も多いのではないでしょうか。

今回は、年金制度の仕組みや種類、受け取り方についてお伝えします。また、2022年の年金制度改正で変わったポイントについても解説します。老後を迎える前に年金制度について理解しておきましょう。

目次

年金制度は3階建てになっている

日本の年金制度は3階建て構造だといわれています。1階部分が国民年金、2階部分が厚生年金で、3階部分が企業年金等です。次の表は、働き方や職業などで年金の被保険者(加入者)を分けたものです。

被保険者の分類

被保険者の働き方や職業

①第1号被保険者

学生や自営業者、フリーランスなど20歳以上60歳未満の人

②第2号被保険者

主に会社員や公務員など厚生年金に加入している人

③第3号被保険者

第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の人

 

第1号被保険者には1階部分しかありませんが、確定拠出年金などに加入すれば、3階部分を作ることもできます。

会社員や公務員などの厚生年金加入者は、1階部分の国民年金にも加入しなければいけません。そのため、厚生年金加入者は国民年金と厚生年金の両方を受給できる仕組みになっているのです。さらに、勤め先の企業年金に加入している人には、3階部分の上乗せもあります。

年金の仕組みで注意が必要なのは、第3号被保険者についてです。第3号被保険者の年金保険料は、配偶者が負担しています。配偶者が厚生年金に加入していても、第3号被保険者は国民年金の加入者となります。よって、第3号被保険者の受け取る年金は、基礎年金のみとなることを覚えておきましょう。

公的年金の3つの種類と受け取り方

公的年金は老齢だけでなく、障害や死亡も給付の対象としています。年金の受け取り方は、「老齢年金」「障害年金」「遺族年金」の3種類です。それぞれをまとめると、次のようになります。

老齢年金

老齢基礎年金:国民年金の加入者だった人が受け取る年金。受給資格期間が10年以上ある場合に、65歳から支給される。
老齢厚生年金:老齢基礎年金の受給資格がある人に支給される。

障害年金

加入期間中に病気やケガで障害を負ったときに支給される年金。障害基礎年金と障害厚生年金がある。

遺族年金

年金受給者や加入者が亡くなったときに、遺族に支給される年金。遺族基礎年金と遺族厚生年金がある。

 

老齢厚生年金は老齢基礎年金を受け取る資格がない場合は、支給されないことに注意が必要です。老齢厚生年金の年金額は、厚生年金加入期間の報酬や加入期間によって異なります。くわしい年金額については「ねんきん定期便」で確認してみてください。

障害年金には、年金に加入している期間に初診日があるか、保険料納付済期間を満たしているかなど一定の受給要件があります。また、年金額は障害の程度や家族構成によって異なります。

遺族基礎年金を受け取るには、「年金加入者の死亡時に18歳未満の子がいる」など一定の条件を満たさなければいけません。一方で、遺族厚生年金は、子がいない配偶者も受給することができます。また、遺族基礎年金を受け取れる人は、遺族厚生年金とあわせて受け取ることができます。

このように、年金制度は老後の生活を支えるためだけでなく、ケガや病気で働けなくなったときや、配偶者の死亡による場合も給付を受けられます。しかし、保険料納付期間が足りないと、万が一のときに給付を受けられないため、納付を忘れないようにしましょう。

2022年の年金制度改正で変わった4つのポイント

2020年5月、年金制度改正法が成立し、2022年4月から制度改正が行われています。次の4つは、2022年4月の改正で変わったポイントです。

  1. 年金受給開始年齢の上限引き上げ
  2. 在職老齢年金の見直し
  3. 確定拠出年金の加入可能年齢引き上げ
  4. 被用者保険の適用範囲拡大

1つ目の改正は、年金の受給開始年齢の上限が75歳に引き上げられたことです。1ヶ月あたりの繰り下げ増額率は0.7%のため、受給開始時期を75歳まで繰り下げると最大184%年金が増額することになります。

2つ目は、在職老齢年金の見直しです。在職老齢年金とは、60歳以降も働きながら年金を受け取る人のことです。制度改正前は、60歳から64歳の年金受給者の場合、年金額と給与の合計が月28万円を超えると年金額が減額されていました。しかし、2022年4月からは60歳から64歳の年金受給者について、月47万円までは年金が減額されないよう改正されています。

3つ目は、確定拠出年金の加入可能年齢の引き上げです。2022年5月以降、企業型DCの加入年齢が70歳未満、iDeCoの加入年齢が65歳未満と5年引き上げられました。また、年金受給開始年齢についても、公的年金と同様、75歳まで選択できるようになっています。

4つ目は2022年10月から施行される被用者保険の適用範囲拡大です。被用者保険とは、厚生年金と健康保険のことを言います。現行では従業員500人超の企業に対し、厚生年金・健康保険の加入が義務付けられています。2022年10月からは適用範囲が拡大されることで、パートやアルバイトの短時間労働者も、厚生年金に加入することができるようになります。

このように、年金の制度改正は年金受給者だけでなく、働いている多くの人に関わることです。年金を受け取る前に、年金制度について理解しておきましょう。

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