高齢者になっても、健康的で元気に趣味や仕事に意欲的に取り組む「アクティブシニア」が増加しています。
長寿社会においては、老後資金や年金問題が懸念されていますが、アクティブシニアを目指す生き方をすることは、結果的にお金の問題も含めて解決できるソリューションになります。
アクティブシニアを目指すためには、「心身ともに健康的な生活を心掛ける」「生涯現役を目指して定年後も働く」「社会のトレンドやニュースに付いていく」など、自身の努力と心掛けでできることが少なくありません。
この記事では、アクティブシニアが増加している背景について解説した上で、アクティブシニアを目指す健康管理などについて紹介していきます。
長寿社会を享受するには健康寿命が重要
日本人の平均寿命は年々上昇しており、2021年時点では、男性が81.47歳、女性が87.57歳になっている世界有数の長寿社会が到来しています。
ただ、いくら多くの人が長生きできるようになったとはいえ、健康に過ごせなければ長寿社会の恩恵はありません。
「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる年齢」を示すのが「健康寿命」です。
日本人の健康寿命も年々上昇しており、令和元年(2019年)には、男性の健康寿命は72.68歳、女性の健康寿命は75.38歳となっています。
※出典:厚生労働省
平均寿命と健康寿命の差があることは、人生のQOL(生活満足度)を考える上ではもちろん、老後資金の形成においても非常に重要なことです。
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平均寿命(令和元年) |
健康寿命(令和元年) |
平均寿命と健康寿命の差 |
日本人男性 |
81.41歳 |
72.68歳 |
8.73歳 |
日本人女性 |
87.45歳 |
75.38歳 |
12.07歳 |
健康寿命から平均寿命までの期間には医療費と介護費が増大するため、健康寿命を延ばせば延ばすほど、老後に必要な老後資金は少なくなります。
つまり、健康寿命を延ばすことには、実質的に老後資金の形成と同等かそれ以上に効果があると言えるのです。
アクティブシニアが増加している
急激な高齢化が進む日本では、健康寿命が延びていることもあり、活動的なアクティブシニアが増加しています。
アクティブシニアとは、「仕事や趣味に積極的で、健康志向が高い活発な高齢者」のことです。
日本の高齢者人口は増加傾向にありますが、高齢者人口が増えれば増えるほど、アクティブシニア層も増加します。
経済の面では、高齢者市場は拡大を続けており、みずほコーポレート銀行の調査によれば、高齢者向けマーケットは2007年の62.9兆円から、2025年には101.3兆円規模まで拡大するということです。
※出典:みずほコーポレート銀行産業調査部
旅行や買い物、インターネットサービスにいたるまで、現在の高齢者は非常に活発的となっており、PayPayなどのキャッシュレス決済サービスなどを積極的に使いこなしているアクティブシニアは少なくありません。
労働力という観点で見ても、人手不足の日本では高齢者の労働力は欠かせないものとなっています。
高齢者の就業率は年々上昇し続けており、2021年には65歳以上の高齢者の就業率は25.1%と過去最高を記録しました。
※出典:総務省統計局
さらに、健康面においても、現在の高齢者は昔に比べて健康になっているというデータもあります。
健康には個人差があるものの、2030年時点では約8割の高齢者が介護不要で自立的に暮らしているという総務省発表の予測データがあります。
※出典:総務省「変わる高齢者像 -アクティブシニアの出現-」
このように、経済・労働・健康のあらゆるデータで見ても、高齢社会の進展とともにアクティブシニアが増加していると言えるでしょう。
年金・医療・介護の社会保障費の増加など、日本では高齢社会のリスクも顕在化してきている一方、経済や人手不足など、アクティブシニアなしには成り立たない面も多いことは確かです。
アクティブシニアを目指すための健康管理法
健康寿命が長いアクティブシニアになることは、仕事や趣味などのQOLを高めることはもちろん、お金という観点で見ても好ましいことです。
老後資金のために資産形成して、早期退職(FIRE)をしたとしても、早々に健康を害してしまえば、いくらお金があっても長寿社会は享受できません。
アクティブシニアを目指すための健康管理法について押さえておきましょう。
心身ともに健康的な生活を心掛ける
衣食住の充実や定期的な運動といった健康的な生活を続けることは、活動的なアクティブシニアを目指すためには欠かせません。
過食やアルコールの過剰摂取、タバコ、運動不足といった健康を害するライフスタイルは、身体や精神だけでなく、医療費などでお金にもダメージを与えます。
また、アクティブシニアを目指すためには、常に感謝する、家族を大切にする、コミュニティに社会貢献するといった、精神面でも健康的な生活を心掛けることが重要なことは言うまでもありません。
生涯現役を目指して定年後も働く
アクティブシニアにとっては、家族や職場、趣味のサークルといったコミュニティへの社会貢献は最大の生きがいになるものです。
特に、定年退職すると、職場コミュニティを失ってしまう人は少なくありません。
日本労働組合総連合会(連合)が2020年に発表した「高齢者雇用に関する調査2020」によると、高齢者が働く理由としては、「健康を維持するため」(46.2%)、「生活の質を高めるため」(33.9%)、「働くことに生きがいを感じているため」(28.8%)、「仕事を辞めてもやることがないから」(24.9%)など、金銭面以外の理由で働き続けるシニア世代が少なくないことが分かります。
※出典:日本労働組合総連合会
生涯現役を続けることは、お金の面でメリットがあることはもちろん、社会参加を通じた健康促進や暇防止に繋がり、アクティブシニアのQOLを高めることにもなります。
社会のトレンドやニュースに付いていく
人間は社会的な生き物であるため、社会との接点がなくなってしまうと、心身ともに急激に老化が進んでしまいます。
高齢者になると、社会で話題になっているトレンドやニュースに付いていくことが億劫となってしまう方も少なくありません。
スマホやタブレットを使ってみる、「Yahoo!ニュース」で話題になっているニュースについてコメントしてみる、話題のAI「ChatGPT」について調べてみるなど、社会のトレンドやニュースに参加してみる心構えや行動を持つことがアンチエイジングにも有効です。
アクティブシニアが考えておきたい老人ホームについて
FPのお仕事として、アクティブシニアの皆さんに知っておいて欲しいことの一つに、公的介護保険や老人ホーム周りの知識があります。
アクティブシニアは増えていますが、85歳以上になると、要介護の割合が急激に増加することは、人間である以上は避けられません。
65歳以上の高齢者は、公的介護保険の第1号被保険者となり、市町村から要介護・要支援認定を受けることによって、介護給付が受けられるようになります。
前年の合計所得金額が160万円未満なら、介護の自己負担額は1割です。
公的に利用できる「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」は、入浴や食事など日常生活上の支援や療養上の世話を提供しており、要介護3以上で入所できます。
リハビリテーションを中心として医療サービスを提供する施設である「介護老人保健施設(老健)」は、要介護1以上で入所できます。
アクティブシニアの方は、バリアフリーが完備された自立型の住宅サービス「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」や、食事提供やレクリエーションを行える「住宅型有料老人ホーム」の利用を検討してみるのもよいでしょう。
アクティブシニアを目指すことは人生100年時代の老後資金対策にもなる
この記事では、日本のアクティブシニアの状況や、アクティブシニアになるメリット、アクティブシニアを目指すための健康管理法などについて解説してきました。
日本では、高齢社会の進展とともに、仕事や趣味に活発なアクティブシニアが増加しており、経済や人手不足の観点からも不可欠な存在となっています。
老後のお金について考えると、健康寿命を長くすることは、老後資産の形成と同等かそれ以上の効果があるため、アクティブシニアを目指すことは人生100年時代の老後資金対策にもなります。
アクティブシニアを目指すための健康管理法としては、「心身ともに健康的な生活を心掛ける」「生涯現役を目指して定年後も働く」「社会のトレンドやニュースに付いていく」など、心掛け一つでできることが少なくありません。
ただ、人間である以上、アクティブシニアの方もいつかは要介護になるリスクがあるため、介護保険や老人ホーム周りの知識については、気軽にFPに相談してみてください。